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更新日:2020/3/5

新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大と当面の対応について

1.新型コロナウイルス感染症の現況 …現状は「国内発生早期の段階

(1) 世界保健機関(WHO)の緊急事態宣言

 新型コロナウイルス感染症は、昨年12月に中国湖北省武漢市において確認されて以降、中国を中心に感染が国際的に広がりを見せており、世界保健機関(WHO)からは、1月30日、新型コロナウイルス感染症について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」が宣言されました。

 

(2) 新型コロナウイルス感染症の「指定感染症」認定

 こうしたなか日本政府は、新型コロナウイルス感染症を「指定感染症」に定めました。

 (2020.1.28「新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令」)

 指定感染症とされたことで、感染者に対しては入院措置が取られます。たとえ本人が拒否したとしても、強制的な隔離措置を法の下で取ることが可能とされます。また同居者が感染した場合、同一事業所内で感染者が発生した場合、その周囲の人は濃厚接触者として隔離措置の対象となります。

 

(3) 新型コロナウイルス感染症対策の基本方針

 2月25日に新型コロナウイルス感染症対策本部より基本方針が発表されました。重要事項は以下の通りです

  ①イベントの開催について、全国一律の自粛を呼びかけるものではないが、

   総合的な視点から開催の必要性を検討するよう要求する。

   開催にあたり、アルコール消毒の設置等の感染拡大の防止対策を求める。

  ②医療の提供について、今後感染拡大がある地域では、重症者から感染症指定医療機関に受け入れを行い、

   軽症者については自宅での療養を原則とする方針とする。

  ③企業に対して自宅で勤務するテレワークや時差出社を求める。

(4) 感染症流行の段階 ~新型インフルエンザの基準に照らして

 今回の新型コロナウイルス感染症は、昨年12月に中国で発見されたばかりの感染症のため、明確な基準は整備されていません。現在政府は、「新型インフルエンザ」の流行に備えた基準で対応をしています。

 新型インフルエンザの流行基準は、「海外発生期」「国内発生早期」「国内感染期」「小康期」の四段階です。

 新型インフルエンザの流行基準に照らして、現在は「国内発生早期の段階」と政府の専門家会議は判断しています。今のところ、ある程度まで感染経路を追跡できることが判断の決め手となったと考えられます。

 「国内発生早期」とは、海外で感染したが、日本に帰国、あるいは入国してから発症した人が発見されたり、そうした人たちと一緒に過ごした人の感染が検査で判明する時期です。

 これが「国内感染期(国内流行)」になると、どこの誰から感染したのか分からない人が次々と発見され、感染経路が追えなくなります。こうなれば「流行」です。

 

 

 

 

(5) 新型コロナウイルス感染症の現流行段階をどう評価するか?

 国内では、毎日のように新たな感染者が出てきている状況です。また日本政府は、2月18日の新型コロナウィルス感染症対策本部にて、「感染経路を特定できない可能性のある症例が複数認められる状況であり、患者が増加する局面を想定した対策が必要」との見解を示しました。25日にも「感染経路がわからない患者がいるものの、大規模な感染拡大はない」と、状況は大きく変わらないとの発表がありました。

 これらから考えれば、現下の新型コロナウイルス感染症の流行段階は、「国内発生の早期段階」の「最終盤」、つまり「国内流行」の直前を意味しています。いつ、誰が「国内感染期(国内流行)」のきっかけとなってしまうか分かりません。流行段階への移行を回避するためには、一人ひとりの配慮した行動が求められています。

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2.流行のレベルに応じた対応策の一例

(1)感染が懸念される段階(海外発生期~国内発生早期) 対応レベル1

 ①一般参加行事・イベント

  経済活動への影響を考慮し過剰な対応は避け、予定通り会議やイベントを実施します。

  ただし、今後の感染状況や参加状況を見ながら、流行段階が「国内感染期」に移行した段階で、

  会議やイベント開催の延期もしくは中止について判断することにします。

 ②予防措置の徹底:社員には「咳エチケット」を説明し実行を求めます。

 【咳エチケットとは】https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187997.html(厚生労働省HPより)

   インフルエンザをはじめとして、咳やくしゃみの飛沫により感染する感染症は数多くあります。

   「咳エチケット」とは、これらの感染症を他人に感染させないために、

   個人が咳・くしゃみをする際に、マスクやティッシュ・ハンカチ、袖を使って、口や鼻をおさえることです。

   特に電車や職場、学校など人が集まるところで実践することが重要です。

    1.マスクを着用する。

    2.ティッシュ・ハンカチなどで口や鼻を覆う。

    3.上着の内側や袖(そで)で覆う。

 ③頻繁な手洗いなどの予防措置を心がけることが大切です。

 ④体調不良の社員には、出勤自粛をすすめます。

 ⑤罹患した可能性のある社員と、家族に罹患した可能性のある社員は出勤停止とします。

 

(2)感染拡大が強く懸念される段階(国内発生早期~国内流行期) 対応レベル2

 ※対応レベル1から、以下の取り組みを追加します。

 ①不要不急の会議や延期などができる会議等は、自粛又は延期をします。

 ②グループ討論、懇親会や会議の二次会などの濃厚接触となる状況を避けるため、自粛又は延期します。

 ③大規模な会合・懇親会などで、キャンセル料がかかるものは中止決定し、支出面のリスクを回避します。

 ④複数のメンバーでマイク回し等の使いまわしを極力避けます。

 ⑤感染拡大の状況に応じて、満員電車を避けます。

 

(3)感染が拡大していると認識される段階(国内流行期) 対応レベル3

 ※対応レベル1・対応レベル2に、以下の取り組みを追加し、組織としての危機対応へ移行します。

 ①会議などを中止します。

 ②情報収集と企業存続のための取組をすすめます。

  (公的支援策の情報発信、代替生産設備、資材の確保等の連携と協力、その他、人道的見地からの支援などに取り組む)

 ③出勤を求められる社員は、人ごみ、密閉空間を回避することを目的に、時差出勤や自家用車や自転車、徒歩により通勤をします。

 ④各自、可能な限り在宅勤務でテレワークできる環境整備をすすめます。

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3.対応の判断における検討点

 年度末、新年度が迫るなかで、対応についての判断基準、判断主体、判断範囲(権限)を予め開示しておく必要があります。

 

(1)社員の出勤、会議等の開催判断の基準

 ※感染を「しない」「させない」「広げない」を原則に、必要と思われる措置を適宜実行します。

 ①「海外発生期」~「国内発生早期」に至るまで(対応レベル1の段階)

  ・体調不良の社員の出勤自粛を要請。

  ・マスク着用、手洗い、うがい、手指消毒の励行と呼びかけ。

 ②「国内発生早期」~「国内流行期」に至るまで(対応レベル2の段階)

  ※①の対応に以下を追加します。

  ・不要不急の会議や延期などができる会議について、自粛又は延期をすることがのぞましい。

  ・グループ討論、懇親会や会議の二次会などの濃厚接触についても極力避けることがのぞましい。

  ・複数のメンバーでマイク回しや機材の使いまわしを極力避ける。

  ・大規模会合における懇親会など、キャンセル料がかかるものなど早めに中止の決定をしておく。

   (支出面でのリスクを回避しておく)

 ③「国内感染期」~「小康期」に至るまで(対応レベル3の段階)

  ・会議などは中止する。

  

(2)各組織での判断主体

 ①当面の対応指針の決定   取締役員会

 ②社員の出勤の判断

   <●●支店>      支店長が対応を判断します。

   <●●営業所>     所長が対応を判断します。

   <委員会等の定例会議> 当該委員会の委員長が対応を判断します。

(3)企業における「隔離措置」となった場合の対応策の具体化

 新型コロナウイルス感染症が「指定感染症」に定められたこともあり、感染者には強制的な隔離措置を法の下で取られます。また同居者が感染した場合、同一事業所内で感染者が発生した場合も、その周囲の人は濃厚接触者として隔離措置の対象となります。

 したがって、2週間を越える隔離措置が取られた場合の対応策の具体化が必要です。

 ①一定期間の余裕のある業務

  ・相手に事情を伝えて、隔離後に処理を実施します。

 ②期間の余裕の無い業務について

  ・テレワークで対応します。ただし、管理区域以外に持出ができない情報を使う業務はできません。

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4.社員を休ませる場合の措置について

 社員を休業させる場合、欠勤中の賃金の取り扱いについては、労使で十分に話し合う必要があります。
 また、労使の協力のうえで、社員が安心して休暇を取得できる体制を整えてください。
 なお、賃金の支払いの必要性の有無などについては、個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案する必要があります。
 
(1)発熱などがある方の自主休業
 発熱などの症状があるため社員が自主的に休まれる場合は、通常の病欠と同様に取り扱ってください。
 一方、例えば熱が37.5度以上あることなど一定の症状があることのみをもって、一律に社員に休んでいただく措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には休業手当を支払う必要があります。
 
(2)感染が疑われる方を休業させる場合
 風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合、強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合には、最寄りの保健所などに設置される「帰国者・接触者相談センター」にお問い合わせください。新型コロナウイルス感染の疑いのある場合には、帰国者・接触者外来へ受診するよう勧められます。
 それ以外の方はかかりつけ医にご相談ください。

 「帰国者・接触者相談センター」の結果を踏まえて、職務継続が可能の方を事業主判断で休業させる場合、休業手当の支払いが必要になります。
 
(3)感染した方を休業させる場合
 新型コロナウイルスに感染した社員が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。
 なお、健康保険に加入されている方であれば、要件を満たせば、健康保険から傷病手当金が支給されます。
 
(4)年次有給休暇と病気休暇の取り扱い
 年次有給休暇は、原則として社員の請求する時季に与えなければならないものなので、使用者が一方的に取得させることはできません。したがって、新型コロナウイルス感染の疑いのある社員に、一律に年次有給休暇を取得したこととする取り扱いはできません。
 また、病気休暇制度がある場合は、事業場の就業規則などの規定に照らし適切に取り扱ってください。
 
(5)事業の休止に伴う休業
 今回の新型コロナウイルスにより、事業の休止などを余儀なくされた場合において、労働者を休業させるときには、労使がよく話し合って労働者の不利益を回避するように努力することが大切です。
 休業手当の支払いについては、不可抗力による休業の場合は、使用者に休業手当の支払義務はありません。不可抗力かどうかは、他の代替手段の可能性、事業休止からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案したうえで判断してください。

給与の支払い義務等について、次のサイトを参照してください。(厚労省「企業の方向け」サイト)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html

5.テレワーク(在宅勤務)の導入について

 新型コロナウイルス対策として、国はテレワークの導入を推進しています。とはいえ、いくら非常時だからと言っても、「制度がない」「システムの用意が必要」「セキュリティは?」等々、急に導入するには壁があるのも事実です。

 しかし、そこに小中高校の臨時休校が重なり、テレワークを導入せざるを得ないケースもあるかもしれません。臨時休校期間だけでも対応したいという会社様向けに、在宅勤務規程案をご用意しましたので、下記リンクよりダウンロードしてご参考になさってください。

 ※3月31日までの期間限定を想定した規程案になっております。

 

 また、テレワーク導入、特別休暇の導入については、助成金も決まりました。(2020/3/3現在)
 従来の時間外労働等改善助成金(テレワークコース、職場意識改善コース)について、2020年2月17日~2020年5月31日の間に取り組むことを条件とする特例コースが新たに設けられました。

<テレワークコース>
 事業実施期間中にテレワークを実施した労働者が1人以上いることで
  ・テレワーク用通信機器の導入・運用
  ・就業規則・労使協定等の作成・変更 等
 の費用のうち1/2(上限100万円)が助成されます。

 

<職場意識改善コース>
 事業実施期間中に新型コロナウイルスの対応として労働者が利用できる特別休暇の規定を整備することで
  ・就業規則等の作成・変更
  ・労務管理用機器等の購入・更新 等
 の費用のうち3/4(上限50万円)が助成されます。
(現段階では、要件に記載はありませんが、これについての併給調整等はあるかもしれません。)

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6.新型コロナウイルス感染症に係る小学校等の臨時休業等に伴う保護者の休暇取得支援(新たな助成金制度)について

 厚生労働省は3月2日、以下のどちらかを持つ保護者に、法定の年次有給休暇とは別に有給休暇を与えた事業主に対する助成金を新たに創設することを発表しました。

 

1.臨時休校した小学校等(※)に通う子
 小学校は全校が臨時休校になっているため小学生のお子さんを持つ保護者は対象となります。
 幼稚園、保育園に通うお子様を持つ保護者は対象になりません。

2.新型コロナウイルスに感染した疑いのある小学校等(※)に通う子
 小学校、幼稚園、保育所などに通うお子様を持つ保護者はすべて対象になります。
(※)小学校等には、小学校、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所認定こども園、特別支援学校(高校まで)などが含まれます。

 日額8,330円を上限とし、有給休暇に対する給与全額相当が支給されます。
 非正規雇用者も対象になり、対象は令和2年2月27日~3月31日の間に取得した休暇になります。

 新型コロナウイルスに伴う特別休暇を取得させるためには、特別有給休暇に関する規定を定める必要があります。
ポイントとしては
 1.対象者・期間・取得方法・賃金の取扱い等を明確にすること
 2.特別休暇申出書などを作成し、特別有給取得を文書化すること
の2点となります。
 きちんと規程を定めたうえで社員に特別有給休暇を取得させたいという会社様向けに、新型コロナウイルスに伴う特別休暇規程案をご用意しましたので、下記リンクよりダウンロードしてご参考になさってください。

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